工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ZDP-189 切り出しでローズウッドを削る

切り出し

キャビネットの引き手は駆体に合わせ様々なデザインで、様々な素材で作るが、今回はローズウッドを用いたハンドメイドのもの。
左右1対で5Pairほど作ってみた。

こうしたハンドメイドのものも、扉に埋め込むためのほぞ加工などが伴うので、当然にも機械加工部分も多い。
機械加工が5割ほど。残りは手加工だ。
ローズウッドは比重が0.85〜と重厚なので、これを削るには一般の炭素工具鋼で作られている切り出し小刀では芳しくない。すぐに切れが止まってしまう。

皆、どうしているのだろうか。ハイスの刃などに切り出し型の刃付けをするという人もいるかも知れない。
しかしボクにはスペシャルな切り出しがある。
《ZDP-189》という鋼材名を持つ最も新しい合金からカスタムメイドされた切り出しだ。
刃物鋼材ではTop企業の日立金属株式会社が開発したステンレス系刃物用鋼材。
高硬度、高耐摩耗性が得られ、耐食性も良好のため、切れ味が良く、刃持ちも良い、という優れものだ。
硬度が66〜68HRCというからめちゃくちゃ硬い。(銀紙1号で59〜61、ハイスで61〜63)

ZDP189

需要のほとんどはカスタムナイフなどであるために需要も限られとても高価な刃物素材だが、趣味の世界とはいえ、日々刃付けに勤しんでいる人たちもいる。(最近ではプロの板前さんが包丁を作らせたりもしているようで、マグロを断ち切るにはもってこいという話もあるようだ)
実はこの刃物も、そうした人による製作になるもの。

Sさんという趣味で木工をされている人だが、もっぱら今は刃物造りに専念している。これも好意で頂いちゃったお宝だ。

とても長切れするのでこれまで研いでいなかったが、いよいよ研ぎがねばならないと思うのだが果たして上手く研げるだろうか。
もちろんダイヤモンドの砥石でないと刃は付かない。

■ 参照:カスタムナイフ用粉末刃物鋼 ZDP189について

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  • 良く切れそうですね。
    形もかっこいいです。
    カスタムナイフなどは両刃なので3層になったものを
    使うようですが切り出し小刀の場合は片刃なので全部が
    ZDP189で作られているのでしょうか?
    写真の刃は光線の加減か研ぎの加減か3層に見えるのですが片刃用に2層になっているのでしょうか。

  • acanthogobiusさん、コメントありがとうございます。
    これはZDP-189の無垢の素材をそのまま成形、研ぎ上げたものです。
    3層に見えるのは、刃の部分が研ぎ上げやすいように中隙にグラインダー掛けしてあるためです。(断面が円弧状になっている)

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