工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

木製のハンドル(偽金具ではありません)

木のハンドル
家具をデザイン制作していて良く悩むのが引き手などの金具類であると言うことについては過去何度か触れてきたように思うが、その1つの打開策として、既製のものを用いるのではなく自作するということも良く行われる手法。

無論、金工で行うというのが正攻法であり、本来そうすべきものと考えているが、うちにはそのような設備もノウハウも無いので、自作となればやはり得意な木製ということになる。

木製とは言っても、やはり重厚感をねらって良質なローズウッド(インディアンローズウッド)を用いることが多い。
これまでも引き手(ハンドル)の他にも、つまみ、木の丁番、といろいろなものを自作してきたが、素人目には金属と較べ、その堅牢性に疑念を持たれることもあるだろうが、決して必ずしもそう言うものでもないようだ。
むしろ当然にももともと木との親和性は高く、金属のように錆びて機能不全に陥るということもない。
金属と木部の接触部はどうしても腐食しがちなもの。

因みに木の丁番(例えばこれ)は独立初期に自家消費として耐久性を継続検証しているが、20年経過した今も全く問題なく快調に機能している。

このような機能部品の制作はやっかいなものと忌避したがるものだが、いやむしろ木製のハンドル、丁番作りなどは、どちらかと言えば構築的な家具制作とは異なり、彫刻的なおもしろさがあるので、浮かんだデザインイメージを自前の限られた機械、限られた刃物を縦横に使いこなし、どのようなプロセスで完成させるのかといった事などを考えるのは、実はとても楽しく愉快なものなのだね。

さて今回も新たなデザインで試作してみたが、何とか実用になりそうだ。
木製とは言っても1個1個手で削り出すという訳にはいかないから、ある程度のロットでまとめて作る。
これは生産性を考えてのもと言うよりも、品質の安定化と仕様を満たすための必然的な考え方だ。

木のハンドル2Top画像の新たな試作のものも丸鋸昇降盤とルーターマシーンの2つの機械を使って簡単に作ってみた。
右は、これまで開発され、継続して使用してきている引き手の一部。
(これらはオリジナルなものですので、コピーはなさらないよう願いますね)

良い家具造りをする他の木工家のこうした自作の引き手などを眺めてみれば、やはりデザインセンスとアイディアの豊かさを感じさせてくれる。
木工家具の全体からすればほんのディーテールの1つかもしれないが、意外とこのような小さなものでも、イメージ豊かにその作品性を決定づけたりすることもあるもので、手抜きは許されないものの1つだね。

頭脳を柔軟にさせ、これに技能と経験を付加させれば、つまらない既製のものよりもはるかにクールなものが出来るものだ。

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