工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ウォールナット天板と鉋まくら

ウォールナット削り
食卓テーブル天板の鉋掛けをしているの図であるが、どこか嘘っぽい。
こんなに鉋屑があったら邪魔くさいはず。撮影バージョンということでお許しを。
嘘っぽい2つめは、このような鉋屑は鉋掛けの初期段階のものであり、本当の仕上げ段階では、このような刃口一杯の幅で長々しい屑は出ない。
いやそのような鉋屑が出るようでは、まだ仕上げにはなっていないはず。
でも本当にフィニッシュ ! と考えても良いレベルはどうやって確認するのか。
・まずスケールなどを当てて平滑性を確認する。
・目視で逆目が残っていないか確認する(シャープに木理が表れるまで)。
・指蝕で鉋まくらが残っていないか確認する。
などだろう。
でもこれでも十分な確認が取れたとは言えない、かも知れない。
チョークがあれば、鉋が掛かった部分に横に寝かせてそーっとなでてみよう。
濃くチョーク痕が残る、あるいは微妙に引っかかる、といったところは、まだ鉋まくらが残ってるという証左。
この方法は昔、親方から教わったこと。チョークライン
「親方 !、天板、仕上がったぜ。見てくれ」弟子の誇らしげな物言いに、ただ黙ってチョークを持ってきて、仕上がった天板をなで回す。
そこらじゅう、ラインが残っているではないか。
親方、にこやかに弟子を一瞥。「へへへ、まだ足りなかったかな… 」照れ笑いで誤魔化す弟子。
ボクの親方が修行中の頃の話だ。
(画像のチョーク痕がそれ。横ずりなどで接ぎ合わせ部分の目違いを払った後に付けたもの)
この後は、もう一度調子の良い(台がしっかりしている、刃口が狭い、刃口と、刃先の関係性がバランスが取れている、などの条件で)鉋の刃をゆっくりと研ぎ上げ、ふわふわぁ〜とした薄い鉋屑が出る程度に調整し、鉋枕の残った辺りを意識の中心に置きじっくりと全体をかけ直すことで完璧な仕上がりになるだろう。
さて、この天板、ウォールナット2枚矧ぎで、ほぼ2mのもの。
先に書いたように、突き板屋から購入したものだが、無節で、とても素直な木目のものだった。
ちょっと「これもしかして突き板を張った合板?」と勘違いされかねないほどの綺麗な天板になった。
原木製材したものの比較的良質なところを、隣り合わせでいわゆるブックマッチに矧いだもの。
少し面白みに欠ける素直すぎる板目ではあるが、ウォールナット本来の品格を醸してくれたように思う。
こういう素直な板は鉋掛けも比較的ラクチン。さらさらと良い鉋屑が排出される。
裏表、2台の鉋で、それぞれ1度研ぎ直すだけで仕上がった。
ウォールナットの気乾比重は広葉樹の中ではやや重たいぐらいの0.62。
しかし木理はとても緻密で靱性は群を抜いて高い。
手鉋で削り上がった板面を指先で撫でれば、塗装しているわけでもないのにすべすべとして、世界の銘木たる品格を感じさせてくれる。
現在、別項でサンディングについて記述を進めているが、やはり素地調整というものの前段階での鉋掛けはとても重要。
如何にサンディングが上手であっても、鉋掛けが不十分であれば、その分、サンディングに過度に依存しなければばならず、これはあまり良い結果をもたらさないだろう。
板脚のデザインなのだが、この脚部も2寸板を用いたが同じ原木からのものなので、作品トータルとして、良い仕上がりになったと思う。

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