工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

iPhone 4 とApple.incの戦略

iPhone4
iPhone 4 がやってきた。

発売日から数えて2週間後、7月5日に予約手続きしたものだが、潤沢な供給量に達していない状況からすれば3〜4週間の待ちは覚悟していたので、ほぼ想定に近い入荷だった(容量16GBであれば、もう1週間ほどは早かったかも)。

発売日から3日で170万台を売り上げたとの公式アナウンスがあってから、その後の推移は不明なるものの、世界的な需要を満たすだけの供給力は未だ確保されていない模様。

iPhone 4の発売に先立つiPadの状況も同様のようで、他のスマートフォンも採用しつつあるタッチパネル式ディスプレーとセンサーの需要が急増していることの影響、あるいはApple独自のCPUである「A4」チップの供給力不足(韓国、サムスンの製造)もあるのだろう。
あるいはこのiPhone 4で初めて採用された光沢パネル、アルミノケイ酸ガラスの加工もとても難しいようで、メーカーも苦闘しているらしい(ホワイトモデルが発売延期になったのも関係するかな)。

iPhone 4 に関しては既に多くのところでその快適さ、美しさ、スゴさに関してのリポートがあがっているだろうから、ここでボクが的外れな紹介をするまでもないだろう。
件の「Antenna Gate」問題だが、自宅(工房)の環境では、全く影響を感じさせるものではなかった。


環境を変えて外出した折りにでもチェックしてみたいと思うが、そもそも国内キャリア、Softbankの無線網ではあまり問題にならないとの話しもあるので、普及が進むとともに国内ではこの問題はむしろ沈静化の方向へと向かうのではないだろうか。

この問題への対応としてのケース無償配布だが、さっそく入手手続きした。
しかし何と入荷まで6〜8週待ちだそうだ。
3rdパーティー社のものを含め6種ほどの選択肢があるが、それらは未だ市場には出されていないものも多く、世界市場への供給ともなれば仕方がない面もある。
iWood for iPhone 4 も8月下旬発売予定だというので、ほぼ同じ頃になってしまう怖れが多い。

このiPhone 4の快適さは、言うまでもなく〈iOS 4〉という基本ソフトの洗練度の高さにあるわけだが、Appleらしさの象徴とも言えるようなクールさだ。

つまりタッチパネル操作に見られるGUI(graphical user interface:グラフィカルユーザーインターフェイス)での直感的な操作感、あるいはOS全般の作り込み、それらに貫かれる洗練されたデザインなどの集大成ということだろう。

ところでiPhone 4 が発表されたのは6月7日のサンフランシスコにおける世界開発者会議(WWDC)であったが、ジョブズCEOのこの基調講演の中ではMac、あるいはMac OS に関するメッセージは皆無だった。かつてこんなことはなかった。
必ずMacの更新があったり、Mac OSの更新などが華々しく披露されたものだった。
それに代えて高々と宣言されたのが iOS 4 と新たに命名されたタブレット向けのOSについてだった。
これはとても象徴的なできごとのように思えてならない。

つまり時代はパーソナルコンピューターの時代から、大きくそのステージは変わり、タブレット型へと移行しつつあることを指し示しているかのようだ。
このことをジョブズ本人の口から引き出したのが “D: All Things Digital”カンファレンス(D8)でのインタビュー(こちら)(日本関連サイトでの抄訳

Q:プラットフォームについて。あなた(jobs)はキャリアのほとんどをマイクロソフトとのプラットフォーム戦争に費やしてきたが、結局は負けた。しかしスマートフォンという新しいプラットフォームでは、アップルは非常に成功している。そしてタブレット市場も始まろうとしている。

A:プラットフォーム戦争だとは思わない。マイクロソフトとプラットフォーム争いをしていたと考えたこともない。それが負けた原因かもしれないが。(会場受ける) われわれはただ最高のものを作ろうとしていただけ。どうすればもっと良い製品を作れるかとだけ考えていた。

Q:タブレットはノートPCを置き換えるか?

A:それについては……(長い沈黙)。なにか良い例えがないかな。農業が中心だったころには、自動車はすべて荷台のついたトラックだった。しかし人々が都会に住むようになれば、自動車のことをもっと考えるようになる。PCはピックアップトラックのようになるのだと思う。必要とする人はだんだん少なくなってゆく。
このことが一部の人を不安にさせるのだろう。われわれは長いあいだPCの世話になってきたし、PCはすばらしいものだ。しかしそれも変わってゆく。利益の構造も変わる。われわれはその戸口にいる。iPadがそれになるのか?分からない。変化は来年か、5年後かもしれない。
「魔法のような」製品というと笑われるが、コンピューターとユーザーのあいだにあるものを取り払ったことは……(「キーボードとか」)。でも、iPadには魔法のような何かがあるんだ。われわれはまだ、タブレットでできるアプリの可能性のほんの上っ面にしか触れていないと思う。

engadget日本版

多くのIT関連投資家もこのことに気づき初めているだろう。
つまりApple社の収益の柱はこれまでのMac、およぼ関連ソフトの販売益から、iPhone、iPad らのタブレットデバイス、およびAPP Store、iBookstoreなどの関連売り上げへと歴史的に転換しつつあるということである。

ジョブズ氏自身がこの時代の推移をどこまで見通しているかは分からないが、しかし明らかなことはIT社会のステージは大きく動いており、その劈頭で霧の向こうを指さしているのがGoogle社であり、Samsung社であり、Appleだということ。

しかしそれは宮崎駿氏の嫌悪感をさらに増大させる方向へか、いやそうではなくもっと人の能力と想像力を涵養させるような世界へとIT社会が充実していくものなのかは、まだ誰にも見通せるものではないのかもしれない。

ボクの手元にやってきた iPhone 4 が、宮崎駿氏が語るところの単なる消費財としてのそれに留まってしまうのかは、使い手の自覚と、能力次第であることは確か。

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  •  昨日、CADソフトの営業の方がデモンストレイションに来られて、またまたCADの便利さにヤラレてしまいました。 新しいハタガネが欲しいのといっしょですねぇ。
     プロセスはどうあれ、完成したものがどうかということの方が大切で、使う道具うんぬんより、使ってどうだったかに全てが現れるような気がします。
     杉山さんの作品と、iPhone 4への向き合い方には矛盾や違和感が見られないと僕は思いますが、そうでない人が居ることも確かですね。

  • 鉋屑にiPhone4、こんな写真が撮れるのは
    artisanさんくらいしかいませんね(笑)
    ほしいけど、買っても使わないだろう、
    というのが今の所の感想です。

  • たいすけさん、仰るように「道具」も手の延長として捉えることができるほどまでに自在に使いこなすことができれば違和感なく馴染んでくるでしょうね。
    もちろん、そのことで発想の手法であったり、思考プロセスが偏倚していくこともあるでしょうが、それもまた楽しいものかもしれません。
    ただそれらも道具以前の原初的な“てわざ”を体得しておくことで、より対象化できるというものかもしれませんね。
    iPhoneは、普段工房に籠もり制作活動に勤しむ私のような者にとっては、稀な外出時における懐中に納まるマイMacのデータバンクであり、移動をスムースで楽しくアシストしてくれ、またリソースを強化してくれるものでもありますね。
    この辺りはWinユーザーと長年Macと付き合ってきた者とは少し受け止め方の差異もあるかもしれません。

  • acanthogobius さん、ご指摘の鉋屑を背景にした画像は、実は2年前の iPhone G3 の時と同様でした。
    あの時は確か、木工職人にとって iPhone とは?という自問がテーマでした。
    ってことは・・・iPhoneの進化ほどには、私は進化していない、っていうことか  ^_^;

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