工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

BOSCH コードレスサンダー GSS12V-40

BOSCH コードレスサンダー GSS12V-40

BOSCHのコードレスサンダーでは、数年前〈コードレス吸じんランダムアクションサンダー〉という機種を導入していたのですが、
今回、回転駆動ではなく、長形の〈オービタルサンダー〉が市場投入されていることに気付き、導入。(Top画像:BOSCH公式サイトから拝借)

電源はランダムアクションサンダーと同じく、10.8VのLi-ionバッテリーです。
この機種は米国内で販売されているもので、例によってボルト数値は日本のものと異なっています。

〈GSS12V-40N〉の12VはMaxの電圧です(BOSCH日本法人による表記、10.8Vは公称、つまりLi-ion、1セル、3.6Vの3本が直列に構成され、定格電圧は10.8Vということです)。
なお、40Nの表記が意味するところですが、4Aでの充放電、と解釈、つまり消費電力は43Wということになります。

前回〈ランダムアクションサンダー〉の導入の際も、この10.8Vという、一見、非力なイメージを与え半信半疑での導入でしたが、あにはからんや、その十分な威力に無知を教えられたところでしたので、そうした懸念は頭から排除させ、期待を持ってポチっしたのでした。

結果、期待通りのパワーと、品質の高さに脱帽。

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クラロウォールナット 小卓

クラロウォールナット

異形のテーブルです。

木に少しでもお詳しい方であればお気づきのことと思いますが、
原木丸太から製材された板の、隣り合わせのものを左右に展開し、結合させたもので、
いわゆる“ブックマッチ”という手法で構成された甲板です。

ただフツーの材木では無いがため、このような異形になってしまった、
と言うか、この異形を異形として味わい、活かす試みです。

フツーで無いというのは、
まずはこの形状であり、そして特有の木理、あるいは色調ですね。

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BESSEY ボディクランプ KRE(その2)

bessey K Body REVO
BESSEY K Body REVO カタログから

BESSEY ボディクランプ ストレージ

BESSEY ボディクランプ ストレージ
BESSEY ボディクランプ ストレージ

今回、〈BESSEY ボディクランプ KRE〉導入に合わせ、専用ストレージを作りました。
旧型、2mのものを除く4本と、新規導入のKRE、1mもの、4本、あわせ8本をコンパクト、スマートに収納するものです。

うちの工房建て屋の骨組みは〈250×125 9t〉という、頑固なH鋼が巡っており、手作業場に設置したワークベンチ近くの、このH鋼の柱の2辺に矧ぎ専用のクランプ、0.6m〜1.2mまで3種・20本ほどをぶら下げていて、この残りの1辺に新たに BESSEY ボディクランプ ストレージ を設置。

スマートな納まりです。

これはネットから拾った画像を参照に、28mm構造合板でチャチャッと作りました。
H鋼 9t に、固定のためのボルト孔を穿孔させるのはメチャクチャ大変だったけれど…。

画像、(左から)

  • 旧 K ボディクランプ 4本
  • KRE ボディクランプ 4本
  • 黒い奴が矧ぎ専用クランプ、1mもの10本
  • 梁のH鋼、最上部に 旧型2mのボディクランプを2本
  •  (裏側に1.2mが4本、60cmが4本)
  • 白いアルミレールは、丸ノコ専用フェンス
  • 右の低い位置のものは各種クランプストレージ(キャスター付きの可搬式)

旧 K ボディクランプ6本のうち、顎部分が正常なのは2本しか残っていませんが、前回も触れたように、新規の KRE の顎を代替装着すれば問題無く使えますし、もちろん改良された機能が備わる、ということでもあります。

KRE型の新奇性について

さて、ここからが KRE(K型のRevolution)の解説です。

〈新奇性〉とは言っても、市場に出回り、既にかなりの年数が経過しますので、少しおかしな物言いではありますが、旧型と較べて、といった意味合いですので、突っ込み入れないでくださいね。

旧型と、このKRE、基本的な機構に変わりはありませんが、いくつかのところで明かな進化を見せてくれています。

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BESSEY ボディクランプ KRE

はじめに

BESSEY〈K ボディクランプ〉を更新しました。36年ぶりですよ。
現在、このBESSEYの ボディクランプ を使っていらっしゃる方はかなり多いのではないでしょうか。

詳しくは分かりませんが、このボディクランプ K というクラシックなタイプから KRE に更新され、かなりの年数を経ているものと思われますが、現在、市場で流通している〈ボデディクランプ KRE〉は2018年以降のもののようです。

それ以前の〈KRE〉は固定ヘッド部分の2本のピン周囲の部分に製造上の問題があり、レールに対する顎のカネ(90度)が崩れてしまう傾向にあったようですが、基本的な機能、性能等は変わらないと考えても良いでしょう。

名称 〈KRE〉について

36年間、私が使ってきたボディクランプは〈K Body clamp〉と呼称されてきたものですが、この〈K Body clamp〉〈Revolution〉という名称を付加させ、その頭文字を取り〈KRE〉としたようです。

さて、この〈Revolution〉なるものが、どのような革新性を指すのかを読み解いていきたいと思いますが、進化の詳細を紹介する前に、この更新に至る経緯を少しくお話しさせていただきます。

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カーリーメイプルの ジュエリー チェスト(その4)

トール ベース

ジュエリーチェスト

このジュエリーチェストを載せるベースですが、500mmほどのWideに対し、甲板まで950mmの高さがあることから、“トールベース”と表記。

これはジュエリーチェスト、収納部へのアプローチに手頃な高さからのものです。

全体のバランスからしてやや重心が高くなりますが、これはこれで、スタイリッシュなプロポーションではあると思うのですが、如何でしょう。

脚部などに独自の意匠も視られますので、その辺りを中心にご紹介します。

構成

4本脚のトールキャビネット

  • 左右帆立の側板、背板などは1枚の無垢板
  • 正面は1,500Rの円弧状の棚口2本。
  • 底板
  • 甲板は脚部意匠に相似形に成型され、駒留め
  • 抽斗はフルトラベルの機構を有するスライドレール方式

脚部、および 抽斗収納部

42×60mmの断面を持つカーリーメイプル材を、テリ脚に成型。
この工程の前段階、脚部は45度に捻る形の意匠にしますので、そのための胴付き面を成型確保する必要があります。

つまり、帆立側と棚口側、および背板側の枘が挿入される胴付き面を獲得すべく、42×60mmの平角材の2面を45度に切削しつつ、同時に全体をテリ脚に成型していきます。
当然ですが、テリ脚とは言え、抽斗がくる部分の胴付き面はあくまでも平滑面として残し、残余の下部を成型していきます。

次いで、これら胴付き面の逆側に、20度の角面を獲得します。
この結果、断面で視れば、7角形になります。

このように45度に捻りつつ、対面にはエッジをもたらす面取りを施していくわけですが、これはテリ脚のプロポーションにより豊かな表情をもたらすための手法です。

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カーリーメイプルの ジュエリー チェスト(その3)

カスタムメイドの三段引きスライドレール
カスタムメイドの三段引き木製スライドレール

寸法と構成について

サイズ:480w 300d 255h
ジュエリーチェストの標準的なサイズはどれほどのものか、これは基準となるものなどあるわけでも無いので任意に決めています。

あえて云えば、ベースの抽斗部分にA4サイズの書類が余裕を持って保管できるほどのものとし、そこから演繹させてのチェスト部の寸法割り付けという算出になっています。

また、この左右の袖・開き扉の材ですが、側面は1枚板の無垢材であるのは言うまでもありませんが、実は、この側面に接続する背面と見付側までの残り2ブロックも、側面から延長された、1枚の板からの木取り、
つまり 背面ー側面ー正面(見付)合わせて1枚の板からの木取りでして、420mmほどの横幅になるのですが、これは手持ちの材の横幅、ギリギリの制約から規定された奥行き寸法というわけです。

無垢材の家具制作では、様々な工程があり、それぞれに重要なポイントがありますが、木取りのプロセスはその中でも重要な工程の1つです。
設計仕様を満たすに足る部材を切り出すだけに留まらず、無垢材の家具ならではの仕上がりの良質さを決めるのも、この木取り工程と言えるわけです。
家具のそれぞれの部位にふさわしい物理的特性を備え、かつ、それぞれの部位にふさわしい美質を表すような木取りを心がけていきます。

画像をご覧のように、正面(見付)側にカーリー杢がが良く醸されている柾目がきているのも、そうした側面全体の木取りの結果です。

話を戻しますが、この(制約を含めた)側面寸法を基準とし、これにバランスを取る形で長辺側の寸法を割り出しています。

木取りにおける制約、そしてベースを含めた全体のバランスなどを考慮していくことで、自ずから全体の寸法も決まってくるということです。

中央ブロック

本体中央部の組み立て
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カーリーメイプルの ジュエリー チェスト(その2)

ジュエリーチェスト

今回のような小型のキャビネットで、独自の機能を要求される木工家具制作などは、一般の家具とは別次元の技法、納まりの在り様、それらへの新たなアプローチが求められるところから、制作過程では日々、新鮮な気分が横溢しつつの作業となり、なかなか楽しいものです。

長いキャリアで木工職を弛みなく活き活きと継続するには、培われた技法で淡々と作り続けるのも良いでしょうが、こうした新たなジャンルへのアプローチは、老いてなお若々しく木と戯れるのも、悪くありませんね。

なお、1つ、1つの技法などは、これまで培ってきたものの応用であったり、拡張されたものが基本で、決してそれ自体新奇性を問われるものと言うより、発展形といった位置づけのものが多いです。

これは木工職に限らずだと思われますが、キャリアごとの時点で、作られるものは常にそれまでに培ってきたものの集大成です。
技法や職能の進化を生み出すには、日々、自身の仕事に真剣にに立ち向かい、心中深く描く、よりよい意匠を叶えるため、合目的的で、無理、無駄の無い技法の獲得と、その練度が問われ、これに応えていく日々の積み重ねが求められてくるということです。

老いとともに、数日前に会った人の名を忘れることはあっても、日々の厳しい仕事のなかから修練され、自家薬籠中のものとなったモノ作りのエッセンスは、決して失われることも、裏切られることなども無く、そこを信じ、またそこから新たな次元への飛躍へとチャレンジしていくことで、木工職としての歩みも、打ち鍛えられた良質な刃物の鋼の如くに、日々鍛えられていくことでしょう。

前振りはこの程度とし、今回のジュエリーチェスト制作における要点などを記述していくことにしますが、まず最初に素材である材木について項を設けさせていただきましょう。

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カーリーメイプルの ジュエリー チェスト

ジュエリー チェスト

ジュエリーチェストという新たなジャンルに初トライ。

鉋イラスト

ブラックウォールナットの小函
ブラックウォールナットの小函

その昔、小函を制作した際、その一部に内部をパーテーションで仕切り、ベルベッド生地を張り巡らせ、ジュエリーBoxとしたことはありましたが、本格的な収納家具・チェストの型式としては初めて。

以前より、瀟洒な小型の家具を作りたいとの欲望がありながら、着手をためらっていた。
しかしともかくも、作る中からこの独自の分野の課題も視えてくるだろうということで、重い腰を上げてみたというところでしょうか。

まずはご婦人が使ってみたくなる…、化粧室、寝室に置いてみたい…、といった高揚感を与えるものでありたい。

かといって、決してデコラティヴなものではなく、シンプルでモダンな住まいの一角に、静かに美しくフィットし、しかし確かな佇まいを与えてくれる何ものか。
そうした思いからの設計プランです。

収納するものはジュエリー、アクセサリーですので、そうした美を備えた貴重な装身具を収納、展覧するものにふさわしく、選び抜かれた自然素材を用い、木工技法のの粋を集め、丁寧な作りを投下し、気品を与えるものでありたいと追求したものです。

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ルーターのフェンスを更新

ルーターマシンのフェンス
ルーターマシン

うちでは大型機械のルーターマシン、いわゆるピンルーターを起業時より導入し、これなくしては仕事にならないほどに依存しています。

今回のルーターフェンスの話しですが、現在使っているのは導入時に作ったもので、1年に1度、平滑性の調整のため、手押し鉋盤を軽く通す程度でこれまで長らく使い続けてきたのですが、

ネット販売のサイトを渉猟中、木工用フェンスに特化したアルミ製のL字型チャンネルが目に飛び込み、胸の高まりを覚え、思わずプチッ。😓
これをベースに新たなフェンスを作ってみようと思い立った次第。

L字型 Tスロット トラック

L字型 Tスロット トラック
L字型 Tスロット トラック

右図がその断面。
フェンス面、75mmという高さは、目的のルーターフェンスとして手頃なものですが、定盤接地面の35mmという幅はやや心許ないのは否めません。
長さは数種あり、1mのものを選ぶ。

ご覧のように、こうしたアルミ鋼材はT字スロットが施されているのが1つの特徴で、拡張性が高くなっています。

ただルーター用のフェンスの場合、このままでは中央部分にあたるところにくる主軸部分のルータービットが干渉しますので、このアルミフェンスに左右、独立した木製のサブフェンスを結合させ、中央部の主軸に対し、開口部を任意にセットするための加工が必要となってきます。

これらのフェンスとサブフェンスの接合には、本体のT字スロットが活きてくるのは言うまでもありません。
ビットの大きさに対応させ、広く、狭く、開口部を任意な幅にセットできるような設計が求められます。

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ミズナラのベッド

ベッド

ご覧の通り、シンプルなデザインのベッドです。
私に制作依頼されたオーナーはデザインはもちろんですが、無垢材を用いたハンドメイドの家具への強い拘りを持つ方で、お話を受け、着工までは半年を超えるやりとりが繰り返され、今回、制作を終え、納品へと漕ぎ着けた時は、感慨一入でした。

長年、木工屋をやってきましたが、実はベッド制作の機会は数えるほどしかなく、公式Webサイトに掲載したのはその中の1件のみ。

真正マホガニーによる天蓋付きのベッド

これは当時、親しくしていただいていた著名な陶芸家からの依頼でした。

廃業する家具会社から譲って頂いたホンジョラス産のマホガニーをふんだんに用い制作した若い頃の仕事で、精一杯作らせていただいた渾身の作です。
ヘッドボード中央のダークな色調のものはクラロウォールナットです。
マホガニー 4Post ベッド。この画像は亡くなられた陶芸家から譲り受けたお宅に設置されたもの)。

さて、今回 用いた材種ですが、当初はブラックチェリーで考えていたのでしたが、工房のギャラリーに展示されている家具や、在庫の木材をご覧になっていただいた結果、迷われた末に選ばれたのはミズナラでした。

ミズナラ 柾目材

2mの長さのサイドレールには7年ほど前、柾目に製材したミズナラを。

そして、20年ほど昔、地元の大手製紙会社から購入を持ちかけられた、南アルプス産、1m越えのミズナラ材をヘッド、フットボードのパネルに(上の画像がそれ)。
これは本柾で400mm幅という、かなり贅沢な木取りになります。

ところで、楢材は家具材として良質の評価は定着しているわけですが、反りやすいというのが欠点。
そうした特性があるところから、楢材の場合、一般には反りにくい柾目で製材します。
芯持ちの板目で製材しますと、乾燥過程において間違い無く大きく反り、歩留まりも悪く、具合良くありません。
柾目製材であれば、こうした反りを防ぐことができます。

ただ、楢材の柾目は、板面に髄線が斑として表出されてしまう(虎斑/トラフ)ことは知っての通り。
家具市場では、こうした楢材固有の斑を嫌う傾向があることも事実のようです。

因みに、オーク家具で有名な英国のトラディショナルな家具の場合、あえてこの虎斑を前面に押し出し、意匠の特性の1つとすることもあるわけですが、この材種の物理的特性と、虎斑という木理が醸す表情を積極的、合理的に評価した結果としての活用と言えるかも知れませんね。

今回は、発注者との合意を得た上で、この虎斑をあえて活かした木取りにしました。

ベッド(+ウッドスプリング)
ベッドにウッドスプリングをセット
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