超重量級 オノオレカンバ のテーブル

オノオレ材の調達
〈オノオレカンバ〉の食卓テーブル。
国産材としてもっとも重厚な部類に入る材種の〈オノオレカンバ、別名:ミネバリ〉(気乾比重:0.99)。
今回のテーブルの場合、天板だけでも90kg近くにもなり、脚部を含めれば140kgほどの重量。
この〈オノオレカンバ〉、一般的な用途としては、良く知られたところでは、木曽の〈お六櫛〉がありますが、他には硬質性、堅牢性が要求される、例えば算盤の玉、将棋の駒などと言った いわばかなり特異なジャンルの小物の品々。
こうした特異な物理的特性を有する材種をあえて家具に使うということはほとんど無いだろうと思われ、ましてや、かなりの材積を要するテーブルに設えるという話しは聞いた事がありません。
ところが世の中にはこのような特異な材種を特に尊ばれ、身近に置いて使いたいという粋狂な好事家もおられ、このクライアントからの要請を受けた〈オノオレカンバ〉を製材、乾燥管理しておられる木工アカデミック界のレジェンドから指名を受け、作る機会を与えられたのでした。
製材、乾燥管理しておられたのは、信州・松本の〈AQデザイン開発研究所〉主宰の阿部蔵之氏。
初冬のある日、塩尻ICを降り、道の脇には新雪が残る山麓の裏道をノーマルタイヤのトラックでのそのそと運行し、標高700mの松本平から、さらに1,400mほどもある〈AQデザイン開発研究所〉まで何とか辿り着き、久々の交歓もそこそこに、敷地内の土場から4寸5分の厚みで製材された〈オノオレカンバ〉5丁ほどを積み込む。
1丁で100kg〜140kgほどもあり、二人でトラックの荷台に移動させるだけでも、大仕事。
瞬時に、大変な仕事を請けてしまったものだと悔いる気持ちに襲われもしたものです。
うちにも400mmを製材できる大型の帯ノコはあるものの、こんな重厚な材はとても御しきれないことも明らかで、まずは安曇野の製材所に向かい、うち3丁を天板用として半割再製材。


製材の帯鋸も、何やらその材の硬さから踊ってしまうようで、簡単な製材ではありませんでした。
一般的な材木製材では生木の状態なので、いかに重厚とは言えそれなりに柔らかく、このように踊ることは無いでしょう。
しかし、気乾比重ほどに乾燥が進めば、材は締まり、硬さが大きく増強されてくることから、製材機も悲鳴を上げることになるというわけです。
難行を強いられながらも、全て首尾良く製材を終え、真っ白な雪を頂く北アルプスの峰々を眺望しながら、初冬の信州を後にし無事に帰還。
その後、手元に確保された材を子細に検証し、顧客にも来訪していただき協議しつつ最終設計へと辿り着くのでした。
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