工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

吟遊詩人・レナード・コーエンという難問(追悼にかえて)

2008 concert tourから

2008 concert tourから CC by Rama

あまりに突然の訃報・享年82

この11月7日、カナダ生まれ、LA在住の吟遊詩人・レナード・コーエンが亡くなった。

11日、Twitterで訃報を知った時の衝撃は強く、信じられず誤報だろうとさえ思った。

なぜなら、数年前には、欧州を中心に400個所でのライブコンサートを精力的に展開していたし、
斃れる10日ほど前にも、新譜(『You want it Darker』(最後段にクリップ))をリリースし、衰えぬ創作意欲を見せてくれていたし、またこの新譜リリースにあたってのインタビューではボブ・ディランのノーベル文学賞受賞への讃辞を語り、そこでは「死ぬ準備はできているが、ボクは永遠に生きるつもりだ」「120歳まで生きるよ(笑)」と、柔らかな笑みを浮かべ静かに語ってくれていたばかりだったからね(RO69the Guardian)。

「永遠に生きるつもり」とは根拠の無い生への意欲の表明でしかないとしても、「死ぬ準備はできている」( ‘I am ready to die’ I’m ready my Lord.)との前言を飜し、生きる意欲を掻き立てたのは彼が禅僧としての修行の日々を積んできたことにも、その抗いの背景を見つけることができるかもしれない。

彼が師事していた禅僧の老師(佐々木承周)は120まで生きるとされていた(実際は107歳で没している)。

死はいつも突然だ。
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〈日高工房オープンワークショップ〉への参加から

日高さんの木の器と奥様の手料理

日高さんの木の器と奥様の手料理

11月最初の週末、信州、佐久の山里・香坂にある日高英夫氏の工房において、阿部蔵之氏主宰による【日高工房ワークショップ 「 スーパー座刳り装置の公開・解明 」- 木の大学講座イクスカーション2016】が開催され、参加させていただきました。

日高氏は松本クラフトフェアの第1回めから毎年のように出展していたシェーカーの優れた作り手であり、多くの使い手を魅了してきたその作品の質において揺るがない評価を確かなものとしてきた木工家でした。

残念ながら今年2月に病に斃れ、帰らぬ人と為り、主のいない工房と有り余る材木が遺されることになってしまったのでした。

この日高氏と生前から親しく交流していた阿部蔵之氏と、ご遺族・日高氏の夫人である雅恵さんと協議の上、遺された工房を開放し、若い木工家らに日高氏の制作の背景を伝え、さらには使い手を失ってしまった木工機械と道具、そして多くの用材を引き継いでもらうことを通し、日高氏の業績を追悼しようと、この【日高工房ワークショップ 「 スーパー座刳り装置の公開・解明 」- 木の大学講座イクスカーション2016】が企画されたのでした。

松本クラフトフェアの初回(1985年)がスタートする、その年に松本に移住した私でしたが、日高氏とはクラフトフェアで2.3言葉を交わす程度で、親しくしていたわけでも無く、木工基礎を学んだ松本技専(職業訓練校)では2年先輩にあたる親しさからも、制作の背景を知りたい欲望もありましたし、一部の木工機械のモーターを三相200vから、単相100vに換装する作業を請け負うこととなり、当地の2人の若い木工家、および知人木工家2人のつごう4名の木工家とともに参加することに。
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集塵ダクト工事(追補)ブラストゲートなど

設置時、全ての端末に取り付けたブラストゲートですが、125φのブラストゲートが足りず、一部ゲート無しでそのまま配管していたのでしたが、やはり状況によっては風力が削がれてしまいそうで導入することにしました。

読者のacanthogobiusさんからもサジェスチョンいただいていたところですが、瑞東産業製のブラストゲート(「集塵用ダンパー」という名称で「大源商会」が販売)は5,000円を超える価格で腰が引けてしまっていたところ、国内でももっと廉価な物があることがわかり、導入することに。

末松工業株式会社製、スカイダンパー

末松工業株式会社製、スカイダンパー

■ 末松工業株式会社製、スカイダンパー:125φ:2.910円(わずかに2,000円の差とは言え6掛けですので、この差額は小さくない)

ネット上ではあまり話題に上がるところではなく、やや不安もありましたがこの程度の板金製品にさほどの品質差があるとも思えず発注。

結果、選択の誤りはありませんでした。完璧な製品です。
たぶん、「瑞東産業製」のものと遜色ないでしょう。
亜鉛メッキ鉄製、1.5tの厚みがあり、剛性もしっかりしています。

「瑞東産業製」の画像と見較べて見ても、瓜二つ。
もしかすると、同一のものでどちらかがOEMなのかも知れません(画像上だけの判断で詳細は不明)。
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集塵ダクト工事

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はじめに

集塵ダクトの施工を試みましたので、その覚え書きを。

恥ずかしながら旧工房では集塵ダクトは無く、マシンに125φ、100φ、2種のホースをおのおの繋ぎ、集塵していました。

新たな工房ではこの集塵システムは必須の要件でしたので、まずは機械屋へ施工の依頼をしました。
ところが、機械屋推奨の集塵機(バグフィルター方式)本体の価格は予算オーバー。
そこで、中古も出てくるだろうからということで、これが入手できた段階で,ダクト工事も同時に行おうという合意で様子を見ていたわけです。

ところが現在に至るもこの機械は現れず、移転以降、旧工房と同じスタイルで推移していたという情けなさ。

これにはさすがに業を煮やし、ダクト工事だけでも先行して行うことに。
それも、業者依頼ではなく、セルフ施工でっ。

セルフ施工ですが、実は当地域の友人の幾人かはセルフで施工しているという事を知っていたからです。
その多くは小規模なものでしたが、中には大きな作業所全域にダクトを巡らせているなど、かなり本格的なものでした。

そこで具体的に調べれば、資材も手軽に入手できることが確認でき、それではと思い立ち、踏み切ったのでした。

ただ、しょせん素人の戯れ、施工を終わってみれば、さっそくいくつもの反省点が出てくるという始末。
ここでの紹介も意味があるとすれば、他山の石としてのそれでしか無いというものです。

エクスキューズはここまでとし、さっそく施工内容に入っていきます。
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チェリーの仏壇

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私は木工屋ですのでテーブルからキャビネット、椅子など、全般にわたり制作してきましたが、どちらかと言えばややキャビネットメーカーに傾斜していると言えるかも知れませんね。

そんな日常に時折仏壇の制作依頼があります。

桜が散り始める頃、以前より個展などをご覧いただいてきた画家のご婦人から仏壇制作の依頼が飛び込みました。
長期療養中であったご主人を亡くされ、間もなくのお話しでした。

これまでは描かれる絵の額の制作を請けた程度の関係でしたが、こうしてご主人のご位牌が納まる大切なものの制作依頼とあり、少し緊張が走りましたね。

遠方でご活躍されるご子息、娘さんとともに来訪され、ご相談させていただき、設計見積もスムースに運び、49日の法事には間に合いませんでしたが、最優先で制作に励んだものです。
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余談:センチメントな旅・牛窓

牛窓の海、手前は前島、後ろに小豆島、右上に屋島

牛窓の海、手前は前島、後ろに小豆島、右上に屋島


今回の旅に先立ち、瀨戸内に面した小さな港町、牛窓に1泊した。
ここは芸術祭の催しがあったわけではないが、私個人の感傷的な思いが残る場所で、半世紀を超えての訪問だった。

当時、ゼネコン社員だった父親の仕事に伴い、4年ほどの期間、家族5人がこの牛窓に居留した。

瀨戸内の港町の思い出ははるかかなたではあったが、車で乗り入れれば、当然にも街並みは大きく変貌していたのだが、一歩路地に足を踏み入れればその頃の家並みは残っており、毎日のように駆け抜けた往時の面影を追い、一気にセンチメントな気分に支配されてしまった。

当時この港町は小さな漁港で造船所もいくつかあったが、今は木造の造船所は無く、辺り一帯はヨットハーバーに変わり、ちょっとしたリゾートの港町にイメージを変えていた。

海に目をやれば、確かに数艇のヨットが白い帆を上げプカプカと浮かんでいる。

丘に登れば当時もオリーブ畑が拡がっていたが、これは今も変わらない。
オリーブと言えば小豆島が有名だが、この牛窓でもかなり古くから栽培していた。
ただ今では純然たるオリーブ栽培というよりも観光資源としてのものに転換しているようだった。

当時、3つ年長の兄はオリーブの実を潰し、学帽に塗りつけ、テカらせ、粋がっていたものだ。
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瀨戸内国際芸術祭 2016 Setouchi Triennale 2016

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夏の終わり、妻の瀨戸内の実家への訪問に合わせ「瀨戸内国際芸術祭2016」のいくつかを探訪することになった。

このアートフェス、全国的にどの程度知られているのか分からないし、私自身、今回の帰省がなければさほど関心を持つものではなかっただろう。

そうしたややネガティヴなツアーだったものの、思いの外楽しめたというのが実感。
ただ時間的制約で渡った島は2つだけ。
小豆島とその東隣の豊島。

以下、簡単に書き留めておきたいと思う。
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相模原・障害者施設における惨殺事件の衝撃(その3)

この事件を考える時、いくつものことで胸のざわつきを覚えるわけだが、犠牲者の名前が公表されないことの違和感も間違いなくその1つ。
下の2つは、これに関わる私のTwitterポスト。

犠牲者の匿名発表への違和

140文字の制約の中で伝えられることには限りがあるので、少しこちらで書いてみたい。

人の生き死にというのは、その人の人生の一大事である。
また、ある犯罪での犠牲者が、どんな事情で、どんな最期を迎えようと、その事件に報道する価値があるとするれば、その報道内容には犠牲者の人定が必須であることも異論を挟む余地は無い(はずだ)。
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相模原・障害者施設における惨殺事件の衝撃(その2:諸団体からの声明など)

障害者関係諸団体などからのメッセージ

ここでは、相模原、知的障害者施設における殺傷事件を受けての、関係諸団体のメッセージのいくつかを紹介します。

それぞれ、後段に全文を転載させていただきます(改行などを除き、原文のママ)。

障害者関連諸団体からのメッセージは、たぶん、他にもあるのだろうと思われますが、Web上から取得できたものを網羅的に渉猟したつもり。
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相模原・障害者施設における惨殺事件の衝撃

sagamiko7月26日未明、相模湖畔に隣接し、周囲の住宅地に溶け込むように立地する知的障害者施設で起きた凄惨な事件を取り上げたい。

この地域の相模湖、そしてそこに繋がる津久井湖周辺ははかつて何度か訪れたことのあるところで、多少はイメージできる。

首都圏の水瓶でもある森の中の湖を囲むように住宅地が点在する静かな地域だ。
津久井という町名は今は無く、相模原市に編入されたのはつい先頃。

相模原市と言えば、工場群に占有され、埃っぽい古ぼけた町のイメージがあり、この津久井湖、相模湖を擁する静かな地域には似つかわしく無い行政区域名ではある。

この静かな湖畔の町を一気に恐怖に陥れる事件が襲った。

19名の犠牲者、20数名の負傷者というその数の多さと犯行態様、知的障害者というその対象、「ヒトラーの思想が2週間前に降りてきた」とする容疑者の鮮烈すぎる犯行意図。

あるいは検察に押送される際の、待ち構えるメディアのカメラに見せた笑いは、凄惨な事件を引き起こした犯人象とも思えぬ晴れやかな顔つきで、それだけに一層背筋に冷たい汗が滲み出るような思いにさせられたものだ。
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