工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

チェリーの仏壇

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私は木工屋ですのでテーブルからキャビネット、椅子など、全般にわたり制作してきましたが、どちらかと言えばややキャビネットメーカーに傾斜していると言えるかも知れませんね。

そんな日常に時折仏壇の制作依頼があります。

桜が散り始める頃、以前より個展などをご覧いただいてきた画家のご婦人から仏壇制作の依頼が飛び込みました。
長期療養中であったご主人を亡くされ、間もなくのお話しでした。

これまでは描かれる絵の額の制作を請けた程度の関係でしたが、こうしてご主人のご位牌が納まる大切なものの制作依頼とあり、少し緊張が走りましたね。

遠方でご活躍されるご子息、娘さんとともに来訪され、ご相談させていただき、設計見積もスムースに運び、49日の法事には間に合いませんでしたが、最優先で制作に励んだものです。
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余談:センチメントな旅・牛窓

牛窓の海、手前は前島、後ろに小豆島、右上に屋島

牛窓の海、手前は前島、後ろに小豆島、右上に屋島


今回の旅に先立ち、瀨戸内に面した小さな港町、牛窓に1泊した。
ここは芸術祭の催しがあったわけではないが、私個人の感傷的な思いが残る場所で、半世紀を超えての訪問だった。

当時、ゼネコン社員だった父親の仕事に伴い、4年ほどの期間、家族5人がこの牛窓に居留した。

瀨戸内の港町の思い出ははるかかなたではあったが、車で乗り入れれば、当然にも街並みは大きく変貌していたのだが、一歩路地に足を踏み入れればその頃の家並みは残っており、毎日のように駆け抜けた往時の面影を追い、一気にセンチメントな気分に支配されてしまった。

当時この港町は小さな漁港で造船所もいくつかあったが、今は木造の造船所は無く、辺り一帯はヨットハーバーに変わり、ちょっとしたリゾートの港町にイメージを変えていた。

海に目をやれば、確かに数艇のヨットが白い帆を上げプカプカと浮かんでいる。

丘に登れば当時もオリーブ畑が拡がっていたが、これは今も変わらない。
オリーブと言えば小豆島が有名だが、この牛窓でもかなり古くから栽培していた。
ただ今では純然たるオリーブ栽培というよりも観光資源としてのものに転換しているようだった。

当時、3つ年長の兄はオリーブの実を潰し、学帽に塗りつけ、テカらせ、粋がっていたものだ。
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瀨戸内国際芸術祭 2016 Setouchi Triennale 2016

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夏の終わり、妻の瀨戸内の実家への訪問に合わせ「瀨戸内国際芸術祭2016」のいくつかを探訪することになった。

このアートフェス、全国的にどの程度知られているのか分からないし、私自身、今回の帰省がなければさほど関心を持つものではなかっただろう。

そうしたややネガティヴなツアーだったものの、思いの外楽しめたというのが実感。
ただ時間的制約で渡った島は2つだけ。
小豆島とその東隣の豊島。

以下、簡単に書き留めておきたいと思う。
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相模原・障害者施設における惨殺事件の衝撃(その3)

この事件を考える時、いくつものことで胸のざわつきを覚えるわけだが、犠牲者の名前が公表されないことの違和感も間違いなくその1つ。
下の2つは、これに関わる私のTwitterポスト。

犠牲者の匿名発表への違和

140文字の制約の中で伝えられることには限りがあるので、少しこちらで書いてみたい。

人の生き死にというのは、その人の人生の一大事である。
また、ある犯罪での犠牲者が、どんな事情で、どんな最期を迎えようと、その事件に報道する価値があるとするれば、その報道内容には犠牲者の人定が必須であることも異論を挟む余地は無い(はずだ)。
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相模原・障害者施設における惨殺事件の衝撃(その2:諸団体からの声明など)

障害者関係諸団体などからのメッセージ

ここでは、相模原、知的障害者施設における殺傷事件を受けての、関係諸団体のメッセージのいくつかを紹介します。

それぞれ、後段に全文を転載させていただきます(改行などを除き、原文のママ)。

障害者関連諸団体からのメッセージは、たぶん、他にもあるのだろうと思われますが、Web上から取得できたものを網羅的に渉猟したつもり。
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相模原・障害者施設における惨殺事件の衝撃

sagamiko7月26日未明、相模湖畔に隣接し、周囲の住宅地に溶け込むように立地する知的障害者施設で起きた凄惨な事件を取り上げたい。

この地域の相模湖、そしてそこに繋がる津久井湖周辺ははかつて何度か訪れたことのあるところで、多少はイメージできる。

首都圏の水瓶でもある森の中の湖を囲むように住宅地が点在する静かな地域だ。
津久井という町名は今は無く、相模原市に編入されたのはつい先頃。

相模原市と言えば、工場群に占有され、埃っぽい古ぼけた町のイメージがあり、この津久井湖、相模湖を擁する静かな地域には似つかわしく無い行政区域名ではある。

この静かな湖畔の町を一気に恐怖に陥れる事件が襲った。

19名の犠牲者、20数名の負傷者というその数の多さと犯行態様、知的障害者というその対象、「ヒトラーの思想が2週間前に降りてきた」とする容疑者の鮮烈すぎる犯行意図。

あるいは検察に押送される際の、待ち構えるメディアのカメラに見せた笑いは、凄惨な事件を引き起こした犯人象とも思えぬ晴れやかな顔つきで、それだけに一層背筋に冷たい汗が滲み出るような思いにさせられたものだ。
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『組手』(阿部蔵之 著)の刊行によせて

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『組手』刊行の意味するもの

木工界にとっては1つの事件とも言うべき敢行(刊行?)であるかもしれません。

『組手 ー國正流・江戸指物の美ー』が発刊されました。
國正流 十三代相伝・阿部蔵之氏によるものです。

ここに開陳されている『組手』の豊穣なる展開、バリエーションは、指物世界における真髄の1つとも言うべきものですが、このような形でディテールが精緻に立体図版化され、指物師(著者・阿部蔵之氏の先代:阿部明氏)による加工過程の撮影画像まで掲載され、それぞれの特徴を分析的に解読するといった類書の出版は、私としては寡聞にしてしりません。

例えば「木工 天秤差し」の2つのキーワードででググってみればお分かりのように、私のこのBlogの関連過去記事が高いランクでヒットするように、私自身の「組手」への注力は少しは自負するものがあるものの、この『組手』を数ページ繙いていくだけで、そこには全く未知の世界が展開され、その豊穣さには目がくらくらするほどのものがあり、私の天秤差しなど児戯に等しいほどのものでしかないと教えられるのです。

本は100頁を越えるほどの分量ですが、1つの組手に2頁を割き、都合40を越える数の組手を公開しています。
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鉞、大鋸、釿、槍鉋、(於:京北「匠の祭典」短評)

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梅雨開け間近の連休、祇園祭りの喧噪を離れ、京都市街から西北に30km地点に拡がる杉林に覆われた京北地域で開かれたイベント。
この豊かな森に囲まれた〈京北森林組合木材加工センター〉において開催された「匠の祭典」に参加しました。

以下、簡単ながらそのリポートです。

「匠の祭典」

鉞による面出し

鉞による面出し

鉞(まさかり)

鉞(まさかり)

既に現場からは消え失せてしまっている大工道具・手仕事刃物の数々を対象として、これらの道具を用い、丸太、板を切り、削り、ハツル、などの実技を、それぞれの名人から学習し、伝承しようというものです。

企画者・長津勝一、通称 長勝鋸さん

企画者は長年にわたる鋸の目立て業務から編み出した、独自の理論での鋸の仕立てによる見事な切れ味で大工道具の世界を驚嘆させた長津勝一氏。通称・長勝鋸さんです。

旭川を拠点として長年目立て業務に勤しんでいた人なのですが、その後、伊豆半島の伊東に移り住み、この頃、静岡市が招聘してのワークショップでお会いし、その凄ワザを間近に見させてもらったのでしたが、数年前、請われるままに京都洛中に工房を構え、関西中心に多くのファンを獲得しつつ、さらには欧州などからも招聘され、国境を越え活躍している知る人ぞ知る名人です。


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ブラックウォールナット材の色、人工乾燥について(再論)追記あり

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Top画像は4枚のブラックウォールナットを撮影したものです。
それぞれ、ジョインター(手押鉋)を通しただけのもので鉋は掛かっていませんが、表情はお判りいただけるでしょう。
下部の濃い部分はオイルを掛けています(OSMO:#1101)

Ⓐ 天然乾燥のみ(工房 悠 管理のもの)
Ⓑ 人乾の製品(米国のNW社製品)
Ⓒ 人乾の製品(北海道に本社のあるN社)
Ⓓ 人乾の製品(静岡、K社で製材、除湿乾燥)

Ⓐ 天然乾燥

これは6年前、静岡市内の木材業者Kさんのところで丸太買いしたもの。
丁寧に天然乾燥させ、数年前からぼちぼち使い始めているブラックウォールナット。

木理は特段個性のあるものでもなく、ごく一般的なものでしょうか。

他のものと比較対照すれば分かりますが、木理に沿い、色調は多彩に展開しているのが認められるかと思います。
緑色は無いようですが、紫紺が冬目部分に認められます。
この縞状に様々に表れるのがブラックウォールナットが標準的に有する色調の特徴です。

Ⓑ 人乾の製品(米国のNW社製品)

160710c10年ほど前、米国に本社があるN社から購入したもの。
この材木業者は、自社で山を持ち、大規模な木材生産をしている会社です。
製材・人乾も自社で行っており、山での伐採から、販売まで一貫生産していている企業です。

この板は、白太が多い部位でしたが、
白太部分にも赤身の色が移っているのが認められるかと思います(特に黄色の斜線部)。
その外側(緑の斜線部)も、やや黒くなっています。

赤身はピンクがかって綺麗ですが、天然乾燥と較べれば、色は薄く、多様な色調は明らかに失われていることが判ります。

Ⓒ 人乾の製品(北海道に本社のあるN社)

赤身にあるはずのチョコレートブラウン色は、ただ黒いだけの色調に変わってしまっているようです。
こうした人乾材は決してめずらしくはなく、通常一般に見られるものと言えるでしょう。

Ⓓ 人乾の製品(国内、K社で製材、除湿乾燥)

これは、工房ショールームの腰板に求めたものですが、ビミョウな多彩さは失われているものの、色調は比較的良く、乾燥材としては優良品と言えるでしょう。

白太が真っ白で、色の移行は認められません。
この白太ですが、腰板にはあえて一部残してあります(サンプルとして一般客への説明に好都合ということもありますのでね)

これは、除湿乾燥という方式の人工乾燥に拠るものです。
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なんちゃって ブラックウォールナット(追補)

本件、ブラックウォールナットの退色(褪色)変化の話しですが、異論反論が押し寄せるかなと、ビクついているものの、音無しですね。

もう既に皆さん、お気づきのことであった事なのかも知れませんね。

ただ、その後、ネット上での関連する記述を(ビクつきながら 笑)探しても、私の知見と同様の記事は探せ出せず、暗澹としているところでもあります。

以下、関連記事で、代表するいくつかの知見を上げて視ませうか。

  • チョコレート色ですが退色して少し薄くなります。
  • 紫褐色した木ですが、経年変化で色が少しき明るくなり落ち着いた色へと変化します。
  • 経年変化によって(日焼けなどによって)色が少しずつ退色し、濃淡の縞も相まって、落ち着きのある、チーク材に似た様な色味、見た目に・・・

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